本間るみ子の美味しいモノがたり
プーリアのチーズと食の旅 Vol.2
2025年11月07日投稿
■カゼイフィーチョ・コラティーノ Caseificio Coratino 訪問(2024.10.10)
ホテルを8時半に出発して15分でチーズ工房に到着。 DOPを持つカネストラート・プリエーゼの見学が目的でしたが、生産時期は羊の群れがアブルッツォオ州からプーリア州に移動してくる12月から5月までのため、私たちが訪問した時期は山羊乳を混ぜてつくっていました。したがってDOPは名乗ることはできません。
凝固したカードのカット。攪拌、型詰めはすべて手作業で行われていました。



熟成室に並んだチーズ



見学後に試食させていただいたチーズがおいしすぎて、
みんなお代わり。食べ過ぎてしまいました!

見学後のランチは、地元で人気だというカジュアルレストラン[Gli Uliva]。
たっぷりの試食でお腹が空かないといっていたはずなのに、どれもおいしく、おしゃべりも楽しく、完食でした。






案内くださったヴィッタンニオ・ロッソ氏。
私たちが熱心で、よく食べるので喜んでくれました。

午後は世界遺産の世界遺産のアルベロベッロ観光を楽しみました。
屋根の端っこに注目。イタリアでもハロウィンのかぼちゃが!



チーズショップは避けて通れない!

■フラニーテ農園 Masseria Fragnite(2024.10.11)
17世紀末から18世紀にかけて建立されたというフラニーテ農園。1832年に伯爵家が所有権を取得し、中庭を拡大して羊を飼う場所をつくり農場を再建しました。しかしそこには住居施設も教会もないため、農業集落としては機能せず、羊を飼育するだけになりました。
1860年、伯爵家の土地の管理人が変わると領土内の土地の売却が進み、農民を守るため住居と小さな教会が建設されました。その後、20世紀初頭の土地所有崩壊を乗り越えて、フラニーテ農園は多くの人が訪れる農園になったといいます。
さて、私たちが農場に到着すると牛さんたちが出迎えてくれました。


午前中の作業はほとんど終了していましたが、ブラータ製造をみせていただきました。
8代目だというピエトロさんの手さばきにうっとり!

熟成室も見学


試食にはチーズと農場で製造しているサラミも



私たちが熱心に質問したからか、ご機嫌のピエトロさんはなんと陶器の中に入れて熟成したというカチョカヴァロを割ってくださいました。ピエトロさんも初めて食べるというスペシャルなチーズでした。農園で製造しているというビールも振舞ってくださり、学び多い楽しい時間でした。
割っているシーンは、下の動画でどうぞ。

陶器で熟成させたカチョカヴァロ


■マッサリア・ブランカーティ・オリーヴ農園 Massaria Brancati

古代から何世紀にもわたって続く30haの農園には1000本以上の巨木があり、そのうち約800本(オリアローラ・サレンティーナ種)が天然記念物として登録されているというのですから驚きます。また、力強く濃厚なオイルの風味で知られるコラティーナ種の若木も800本植えられているそうです。
天然記念物のオリーヴの木

抱き合っているよう

古代からある農園はまるで博物館。広い農園を歩くことができたことに感謝です。




DOPを持つプーリアのオリーヴオイルは5種類。一番人気のE.V.オリーヴオイルは完売でしたが、4種類を試飲することができ、帰りにはおみやげも買いました!
(つづく)
プーリアのチーズと食の旅 Vol.1
2025年09月08日投稿
■ブッラータ・ディ・アンドリア Burrata di Andria(IGP)
中からとろ~り、デザートのようなブッラータに初めて出会ったのはローマでした。どうやってつくるのか見たいと産地のプーリアまで出かけたのは、1998年のことです。
ブッラータが生まれたのは比較的新しく、モッツァレッラをつくるカードが余って処理に困ったビアンキーニさんが、モッツァレッラを袋状にして中に生クリームを混ぜたカードを入れることを思いついたことがきっかけだといいます。出来上がったブッラータをアスフォデーロという緑の葉っぱに包んで販売したのが、プーリアを訪れる観光客に見いだされ、やがてイタリア国中を流通するほどに知名度を上げたのです。
南イタリアは、チーズを販売するお店が通りに面してあり、奥に製造所があるので、店先には出来立てが並べられていました。かつて日本のお豆腐屋さんもそうでしたね。
このときは着いたホテルで、「この近くでおススメのカゼイフィーチョを教えて欲しい」と聞くと、電話帳をコピーして4軒のカゼイフィーチョに印をつけてくれたことを思い出します。
1999年発行の「チーズで巡るイタリアの旅」でも紹介しました


あれから四半世紀。2024年10月、世界遺産のカステル・デル・モンテにある工房CASEIFICIO OLANDAに到着すると、ブッラータ・ディ・アンドリア協会のフランチェスコ・メンネーア会長をはじめ4人が待っていてくれました。

ブッラータ・ディ・アンドリア協会のフランチェスコ・メンネーア会長とスタッフたち
中庭に案内されるや、すぐにブッラータの製造が始まりました。チーズ職人のおじさんはカードを持ち上げて、楽しそうに丸めていきます。そして糸状に裂いた生地と生クリームを入れて袋を閉じて出来上がり。出来立ては熱々なので、試食用はちゃんと冷やしてあるものを出してくださいました。
カードはよく伸びて、気持ちよさそう

カードをちぎって丸めて、袋状にしたら、糸状に裂いた生地とクリームを詰めて袋を閉じます。とっても楽しそう

中庭ではブッラータ製造のデモの準備が整えられていました

たっぷり試食をした後は、協会のご招待でブッラータ尽くしのサプライズランチを楽しみました。
巨大なブッラータにナイフを入れて。心ときめきます
試食のブッラータ。テーブルにドーンと

この後も、ブッラータづくしのランチ




ブッラータ・ディ・アンドリアは、2017年に PGI(地理的表示保護)登録。
現在登録されているのは16軒だそうです。
■ワイナリー・ジャンカルロ・チェチ Giacarlo Ceci
午後はムジェ高原の斜面にあるすばらしい景観のワイナリー「ジャンカルロ・チェチ」を訪問しました。
すばらしい景観のジャンカルロ・チェチ。心地よい風が吹き抜けます。

すぐ近くにはブッラータの見学前に案内してもらったユネスコの世界遺産の登録されている八角形のお城があります。13世紀、神聖ローマ皇帝フリードリヒ2世によって建設されたお城です。


チェチ家の畑は1819年に土地を手に入れてから200年以上の歴史があり、8代目のジャンカルロはボローニャ大学で農業を学び、農場を引き継いだあと、オーガニックに転換したそうです。
2011年には世界でもっとも厳しいと言われるオーガニック認証のひとつ「Demeter デメテール」認証を取得しました。2010年からはクリーンエネルギーである太陽光発電を導入。
サステナブルで自然と共生、自然を尊重した農業をされています。
農場は250ha(葡萄畑70ha、オリーヴ畑100ha、トマト畑30ha、オークの森30haなど)オークの森はぽポドリカ牛が放牧されているいるそうです。牛は乳を搾るためではなく、堆肥をつくるために放牧しているのだといいます。ビオディナミ農法に牛糞は欠かせないのですね。
農園の案内は2匹のワンちゃんです


チェチ氏にはお会いできませんでしたが、農園を案内していただいた後、ゆったりとワインテースティング。DOCのカステル・デル・モンテ2022、2021、2016、DOCGのカステル・デル・モンテのロゼ2022。ワイワイと楽しいテースティングになりました。
4種類のワインをテースティング





港町トラーニ。時間がなくて残念でしたが、翌朝も早起きして散策を楽しみました




陽が落ちる前に港町トラーニのホテルにチェックイン。
海の幸をたっぷりといただきました。(つづく)
クレタ島の旅Vol.2
2025年05月01日投稿
■ミラポタモスへ出発
海辺のホテルでゆっくり朝食を楽しんだ後は、ランド・ローバーに乗って今回の旅のハイライト、シェパード(羊飼いの意味)の家があるミロポタモスへ出発。
ドライバーは岩山を駆け上って岩に生える野生のハーブ「マロティラ」を採ってきてくれました。「マロティラ」は薬効効果があり、古くはミノア文明、古代ギリシャ、中世ヨーロッパでもてはやされたといいます。発見したのは羊飼い!傷を負った山羊たちがこれを食べて回復していくのを見て、真似したところ効果があったと言われています。野生のタイムも力強く感動でした。
私たちのドライバー、ジーザスはまるで神様みたい!

岩山を駆け上って野生のハーブ「マロティラ」を採ってきてくれました

野生の山羊が挨拶にきてくれました

■ミタト「シェパード(羊飼い)の家」で
シェパードのアンドレアさんは私たちの到着を待って、すぐに搾乳を始めました。
アンドレアさんは山羊の頭を後ろにして、自分の足で山羊の首を挟んで、抱きかかえるように搾乳。搾乳は何度も見てきましたが、衝撃的!山羊は安心するのか、落ち着いていて、息もぴったりです。やってみるか?と聞かれたらノー!とは言えません。抱きかかえるようにすると山羊の温もりが伝わってきて気持ちいいこと。私たちは代わる代わる搾乳体験をさせていただきましたが、山羊は迷惑だったと思います。

山羊の頭を足で挟んで搾乳。私たちも代わる代わる体験させていただきました

搾乳が終わった山羊たちは山に登っていきました

アンドレアさんの敷地には羊たちもいました
標高2,456メートルのプロリティス山の麓にあるシェパードの家の標高は860メートル。ここに建つ石造りのチーズ小屋はミノア人のお墓の形で、石を積み上げて7年がかりでつくったそうです。冬は雪が降るために下山しますが、夏の間は自然の中でチーズ製造ができることを楽しそうに話してくれました。
すごく立派な山小屋「ミタト」。「ミタト」とはギリシャ語で避難所、宿泊施設の意味。クレタ島の山岳地帯でミタト(複数形はミタタ)は、羊飼いの避難所として地元で集められた石で建てられた小屋をさす。ここは宿泊施設であり、チーズ作りにも使われているのだそう

小屋の中はDOP認定の「クシノミジスラ・クリティス(XYNOMYZITHRA KRITIS)」の製造中。

このチーズは身が引き締まって柔らかくミルキーなコクと酸味があるケファログラヴィエラDOP(KEFALOGRAVIERA)の製造後、残った乳清でつくられます。クシノはギリシャ語で酸っぱいという意味があり、スパイシーな料理と相性がよく、チーズパイにも使われるそうです。



「クシノミジスラ・クリティス」。乳清でつくるチーズはリコッタと言ってしまいそうですが、ここでは禁句です!

昔使っていた型。左がクシノミジスラ、右は ケファログラヴィエラ用
■ランチタイム
場所を移してランチタイムとなりました。
テーブルに並んだものは、野菜も羊肉もすべて自家製。心地いい風に吹かれて空気も美味しくてすっかりリラックス!最高の贅沢を味わってきました。
食後はクシノミジスラ・クリティスのパイもしっかりいただきました。






■レティムノ旧市街散策
ギリシャ・ローマ、東ローマ帝国時代の古い建造物が残存していて、腹ごなしにはちょうどいい散策でした。羊乳のアイスクリームの看板を発見!さっそく味わってみました。


■山のチーズ工房「リコナキス・ティロコミオ・セリウス」訪問
ツアー4日目だというのに、日が長くてゆったり時間が流れているので、何日も経っているような感覚です。旅仲間とも話が弾み、バスの中は笑い声が響きます。イクラリオンから西に、ハニアの近くの山のチーズ工房に到着しました。
工房はちょうどカードのカットが終わったところで撹拌機を回している間、試食タイムとなりました。チーズはミルキーで塩加減もよく、ミジスラのカードはホエーと一緒にいただきました。美味しくてお代わりしたくなるほどでした。

試食が終わり、いよいよチーズの型入れが始まりました。ここでは羊乳と山羊乳の割合は?なんて質問はご法度です。その日によって違うのですから。

■伝統のチーズ料理
製造見学後はキッチンで伝統のチーズ料理を教えていただき、いよいよ楽しみなランチタイムとなりました。澄み切った青空と心地いい空間。チーズと野菜たっぷり前菜の後のメインは仔羊の炭火焼。肉に直接火があたらないように焼かれていた肉は私たちのためだったのです。










■カラヴィタキス・ワイナリー訪問
ランチのあとはワイナリーの訪問です。ぶどう畑を見学するには暑すぎるので、すぐに試飲タイムとなりました。私たちを案内くださったのは、4代目のニコス氏。
クレタ島全土に畑を所有しており、さらに契約農家の畑も管理しているそうです。
北向きで標高は0~900メートル。9割はギリシャ土着の品種を栽培しています。クレタ島原産のヴィディアノ種のワインも少量ですが生産されています。心地よい風に吹かれて11種類のワインをテースティング。ほどよく酔いが回り、思考能力はすっかりなくなってしまいました。


美しく手入れされたワイナリー。ぶどう畑を見学するには暑すぎるのですぐに試飲タイムとなりました

用意していただいたワイン

旅の通訳はフラギス万梨菜ちゃん。ギリシャワインに魅せられ毎年生産者を訪ねています。母国語は日本語ですが、英語とギリシャ語を話すスーパーウーマン。これからの活躍がますます楽しみでなりません。
旅の最後はハニャの旧港に建つヴェネツィア様式の邸宅でゆっくり夕食を楽しみました。

旅の通訳、フラギス万梨菜ちゃん。難関のWSET Level4を取得しています




三好貴子さんのイラストはいつも癒されます

晴天に恵まれたクレタの最終日は潜水艦や観光を楽しみ、夜のフェリーでピレウス港に翌朝6時に到着。アクロポリス博物館も見学することができました。
