本間るみ子オフィシャルサイト

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本間るみ子の美味しいモノがたり

プーリアのチーズと食の旅 Vol.1

■ブッラータ・ディ・アンドリア Burrata di Andria(IGP)

中からとろ~り、デザートのようなブッラータに初めて出会ったのはローマでした。どうやってつくるのか見たいと産地のプーリアまで出かけたのは、1998年のことです。
ブッラータが生まれたのは比較的新しく、モッツァレッラをつくるカードが余って処理に困ったビアンキーニさんが、モッツァレッラを袋状にして中に生クリームを混ぜたカードを入れることを思いついたことがきっかけだといいます。出来上がったブッラータをアスフォデーロという緑の葉っぱに包んで販売したのが、プーリアを訪れる観光客に見いだされ、やがてイタリア国中を流通するほどに知名度を上げたのです。
南イタリアは、チーズを販売するお店が通りに面してあり、奥に製造所があるので、店先には出来立てが並べられていました。かつて日本のお豆腐屋さんもそうでしたね。
このときは着いたホテルで、「この近くでおススメのカゼイフィーチョを教えて欲しい」と聞くと、電話帳をコピーして4軒のカゼイフィーチョに印をつけてくれたことを思い出します。

1999年発行の「チーズで巡るイタリアの旅」でも紹介しました

あれから四半世紀。2024年10月、世界遺産のカステル・デル・モンテにある工房CASEIFICIO OLANDAに到着すると、ブッラータ・ディ・アンドリア協会のフランチェスコ・メンネーア会長をはじめ4人が待っていてくれました。

ブッラータ・ディ・アンドリア協会のフランチェスコ・メンネーア会長とスタッフたち

中庭に案内されるや、すぐにブッラータの製造が始まりました。チーズ職人のおじさんはカードを持ち上げて、楽しそうに丸めていきます。そして糸状に裂いた生地と生クリームを入れて袋を閉じて出来上がり。出来立ては熱々なので、試食用はちゃんと冷やしてあるものを出してくださいました。

カードはよく伸びて、気持ちよさそう

カードをちぎって丸めて、袋状にしたら、糸状に裂いた生地とクリームを詰めて袋を閉じます。とっても楽しそう

中庭ではブッラータ製造のデモの準備が整えられていました

たっぷり試食をした後は、協会のご招待でブッラータ尽くしのサプライズランチを楽しみました。

巨大なブッラータにナイフを入れて。心ときめきます

試食のブッラータ。テーブルにドーンと

この後も、ブッラータづくしのランチ

ブッラータ・ディ・アンドリアは、2017年に PGI(地理的表示保護)登録。
現在登録されているのは16軒だそうです。

■ワイナリー・ジャンカルロ・チェチ Giacarlo Ceci

午後はムジェ高原の斜面にあるすばらしい景観のワイナリー「ジャンカルロ・チェチ」を訪問しました。

すばらしい景観のジャンカルロ・チェチ。心地よい風が吹き抜けます。

すぐ近くにはブッラータの見学前に案内してもらったユネスコの世界遺産の登録されている八角形のお城があります。13世紀、神聖ローマ皇帝フリードリヒ2世によって建設されたお城です。

チェチ家の畑は1819年に土地を手に入れてから200年以上の歴史があり、8代目のジャンカルロはボローニャ大学で農業を学び、農場を引き継いだあと、オーガニックに転換したそうです。
2011年には世界でもっとも厳しいと言われるオーガニック認証のひとつ「Demeter デメテール」認証を取得しました。2010年からはクリーンエネルギーである太陽光発電を導入。
サステナブルで自然と共生、自然を尊重した農業をされています。
農場は250ha(葡萄畑70ha、オリーヴ畑100ha、トマト畑30ha、オークの森30haなど)オークの森はぽポドリカ牛が放牧されているいるそうです。牛は乳を搾るためではなく、堆肥をつくるために放牧しているのだといいます。ビオディナミ農法に牛糞は欠かせないのですね。

農園の案内は2匹のワンちゃんです

チェチ氏にはお会いできませんでしたが、農園を案内していただいた後、ゆったりとワインテースティング。DOCのカステル・デル・モンテ2022、2021、2016、DOCGのカステル・デル・モンテのロゼ2022。ワイワイと楽しいテースティングになりました。

4種類のワインをテースティング

港町トラーニ。時間がなくて残念でしたが、翌朝も早起きして散策を楽しみました

陽が落ちる前に港町トラーニのホテルにチェックイン。
海の幸をたっぷりといただきました。(つづく)

クレタ島の旅Vol.2

■ミラポタモスへ出発

海辺のホテルでゆっくり朝食を楽しんだ後は、ランド・ローバーに乗って今回の旅のハイライト、シェパード(羊飼いの意味)の家があるミロポタモスへ出発。
ドライバーは岩山を駆け上って岩に生える野生のハーブ「マロティラ」を採ってきてくれました。「マロティラ」は薬効効果があり、古くはミノア文明、古代ギリシャ、中世ヨーロッパでもてはやされたといいます。発見したのは羊飼い!傷を負った山羊たちがこれを食べて回復していくのを見て、真似したところ効果があったと言われています。野生のタイムも力強く感動でした。

私たちのドライバー、ジーザスはまるで神様みたい!

岩山を駆け上って野生のハーブ「マロティラ」を採ってきてくれました

野生の山羊が挨拶にきてくれました

■ミタト「シェパード(羊飼い)の家」で

シェパードのアンドレアさんは私たちの到着を待って、すぐに搾乳を始めました。
アンドレアさんは山羊の頭を後ろにして、自分の足で山羊の首を挟んで、抱きかかえるように搾乳。搾乳は何度も見てきましたが、衝撃的!山羊は安心するのか、落ち着いていて、息もぴったりです。やってみるか?と聞かれたらノー!とは言えません。抱きかかえるようにすると山羊の温もりが伝わってきて気持ちいいこと。私たちは代わる代わる搾乳体験をさせていただきましたが、山羊は迷惑だったと思います。


山羊の頭を足で挟んで搾乳。私たちも代わる代わる体験させていただきました


搾乳が終わった山羊たちは山に登っていきました


アンドレアさんの敷地には羊たちもいました

標高2,456メートルのプロリティス山の麓にあるシェパードの家の標高は860メートル。ここに建つ石造りのチーズ小屋はミノア人のお墓の形で、石を積み上げて7年がかりでつくったそうです。冬は雪が降るために下山しますが、夏の間は自然の中でチーズ製造ができることを楽しそうに話してくれました。

すごく立派な山小屋「ミタト」。「ミタト」とはギリシャ語で避難所、宿泊施設の意味。クレタ島の山岳地帯でミタト(複数形はミタタ)は、羊飼いの避難所として地元で集められた石で建てられた小屋をさす。ここは宿泊施設であり、チーズ作りにも使われているのだそう

小屋の中はDOP認定の「クシノミジスラ・クリティス(XYNOMYZITHRA KRITIS)」の製造中。

このチーズは身が引き締まって柔らかくミルキーなコクと酸味があるケファログラヴィエラDOP(KEFALOGRAVIERA)の製造後、残った乳清でつくられます。クシノはギリシャ語で酸っぱいという意味があり、スパイシーな料理と相性がよく、チーズパイにも使われるそうです。

「クシノミジスラ・クリティス」。乳清でつくるチーズはリコッタと言ってしまいそうですが、ここでは禁句です!

昔使っていた型。左がクシノミジスラ、右は ケファログラヴィエラ用

■ランチタイム

場所を移してランチタイムとなりました。
テーブルに並んだものは、野菜も羊肉もすべて自家製。心地いい風に吹かれて空気も美味しくてすっかりリラックス!最高の贅沢を味わってきました。
食後はクシノミジスラ・クリティスのパイもしっかりいただきました。

■レティムノ旧市街散策

ギリシャ・ローマ、東ローマ帝国時代の古い建造物が残存していて、腹ごなしにはちょうどいい散策でした。羊乳のアイスクリームの看板を発見!さっそく味わってみました。

■山のチーズ工房「リコナキス・ティロコミオ・セリウス」訪問

ツアー4日目だというのに、日が長くてゆったり時間が流れているので、何日も経っているような感覚です。旅仲間とも話が弾み、バスの中は笑い声が響きます。イクラリオンから西に、ハニアの近くの山のチーズ工房に到着しました。
工房はちょうどカードのカットが終わったところで撹拌機を回している間、試食タイムとなりました。チーズはミルキーで塩加減もよく、ミジスラのカードはホエーと一緒にいただきました。美味しくてお代わりしたくなるほどでした。

試食が終わり、いよいよチーズの型入れが始まりました。ここでは羊乳と山羊乳の割合は?なんて質問はご法度です。その日によって違うのですから。

■伝統のチーズ料理

製造見学後はキッチンで伝統のチーズ料理を教えていただき、いよいよ楽しみなランチタイムとなりました。澄み切った青空と心地いい空間。チーズと野菜たっぷり前菜の後のメインは仔羊の炭火焼。肉に直接火があたらないように焼かれていた肉は私たちのためだったのです。

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■カラヴィタキス・ワイナリー訪問

ランチのあとはワイナリーの訪問です。ぶどう畑を見学するには暑すぎるので、すぐに試飲タイムとなりました。私たちを案内くださったのは、4代目のニコス氏。
クレタ島全土に畑を所有しており、さらに契約農家の畑も管理しているそうです。
北向きで標高は0~900メートル。9割はギリシャ土着の品種を栽培しています。クレタ島原産のヴィディアノ種のワインも少量ですが生産されています。心地よい風に吹かれて11種類のワインをテースティング。ほどよく酔いが回り、思考能力はすっかりなくなってしまいました。

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美しく手入れされたワイナリー。ぶどう畑を見学するには暑すぎるのですぐに試飲タイムとなりました

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用意していただいたワイン

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旅の通訳はフラギス万梨菜ちゃん。ギリシャワインに魅せられ毎年生産者を訪ねています。母国語は日本語ですが、英語とギリシャ語を話すスーパーウーマン。これからの活躍がますます楽しみでなりません。
旅の最後はハニャの旧港に建つヴェネツィア様式の邸宅でゆっくり夕食を楽しみました。

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旅の通訳、フラギス万梨菜ちゃん。難関のWSET Level4を取得しています

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三好貴子さんのイラストはいつも癒されます

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晴天に恵まれたクレタの最終日は潜水艦や観光を楽しみ、夜のフェリーでピレウス港に翌朝6時に到着。アクロポリス博物館も見学することができました。

クレタ島の旅Vol.1

■4年ぶりに実現したギリシャの旅

2020年4月に予定していたギリシャの旅。一度はコロナで中止になりましたが、4年たってやっと開催となりました。
ギリシャの食材&ワインを輸入販売する有限会社ノスティミアのフラギス由美子さん&サナさんと出会ったのは20年ほど前になります。
サナさんにギリシャを案内していただいたのは18年前、2006年の4月でした。
当時はまだ私も若くて体力があり、あれもこれもと強行軍の旅でしたから、クレタ島は1泊2日だけでした。その時に訪ねた、山の中にある山羊の農家は、ゴツゴツした岩肌にキャロブ(いなご豆)やイチジクの古木があり、ハーブが生い茂り、まるで山羊たちの楽園のようでした。また岩肌に地元の山羊を見つけて、目が釘付けになったことも懐かしい思い出です。

地元の人たちが「ドッピア」と呼ぶ山羊は「ローカル」という意味でした。
山羊乳のヨーグルトはテラコッタ入り。山羊乳製のヨーグルトのおいしさに感動!
羊の群れともすれ違い、彼女らが通り過ぎるのを車を止めて待ったことも懐かしい!

※以上3点の写真は2006年当時のもの

■ワイナリー「ドメイン・パパイヤナコス Papagiannakos」訪問

トルコ航空、イスタンブールでトランジットしてアテネに着いたのは2024年6月2日
早朝でした。ホテルに荷物を預けてオプショナルツアーに参加。フラギスさんのビジネスパートナー、ドメイン・パパイヤナコスを訪問しました。18年前にも訪ねたことを思い出します。
2019年に設立100周年を迎えたドメイン・パパイヤナコスは4代続く家族経営のワイナリーです。品質にこだわり、意欲的な生産者です。

テロワールにこだわる畑を案内していただきました。樹齢60~70年の葡萄の木は15m以上も根が延びているそうです。
古代ギリシャを感じて深呼吸!北からの風が心地いい!
教会の前にあるピスタチオの木には実がしっかりとついていました。
試飲は10種類!ワインに合うチーズもたっぷりあって大いに楽しみました。

いよいよピレウス港からクレタ島イクラリオに向けて出航です。
船内のレストランで伝統のグリークサラダ、タコのグリル、ムサカを楽しみました。

4代目のステファノ・パパイヤナコスさんと100年前に植えられたサヴァティアノ種

教会の前にあるピスタチオ

10種類もテイスティング!

チーズとピスタチオもたっぷり!

ステファノさんの夢溢れるお話とテイスティングで夢心地
早朝に到着して、酔いがまわります。

船内のレストランで、左からグリークサラダ、タコのグリル、ムサカ

■翌日は、クノッソス宮殿とリララキス・ワインズ Lyrarakis Wines

クレタ島は地中海で5番目に大きい島。兵庫県とだいたい同じくらいの面積ですが内陸には2,000メートルを超える山々があり、森林、渓谷があり、美しい海岸線があります。
クレタの最大の都市がイクラリオンです。
翌日の2024年6月3日は、まずクレタ式朝食をしっかり楽しんで、そのあとは、クノッソス宮殿と遺跡の見学からスタートです。ミノア文明は紀元前3,000年から紀元前1,400年ころまで栄えたといいます。
ギリシャ神話に登場する頭が牛で体が人間のモンスター「ミノタウロス」を閉じ込める迷路があったと言われます。想像がつかなく、すごい!とため息ばかり。

クレタ式朝食を楽しみました

クノッソス宮殿

クノッソスをあとに、リララキスワインズ(Lyrarakis Wines)に到着。
ここは1966年の設立以来、長い間バルク売りをしていました。自らのブランドで瓶詰めを行ったのは1992年。今ではクレタの土着品種と国際品種を使用した高級ワイン造りのリーディングカンパニーとして、またクレタの古代品種を蘇らせた生産者として地元でも、国外でも注目されています。生産量の約40%を輸出していますが、日本でもファンが多いのはフラギスさんファミリーのおかげです。
テイスティング&ランチはぶどう畑の中にあり、風が心地いい。メモも忘れて、飲んで食べて楽しい時間が流れていきました。

ぶどう畑の中の食卓

テイスティングとランチタイム。風が心地よく、リラックス。
よく食べてワインも会話も弾みます。

18:00クレタ島第3の町、レシムノに到着
ホテルは海に面していて、夕食までビーチでのんびりです。
気分はすっかりとリゾート。夕食はシーフードをたっぷりと楽しみました。

海に面したビーチホテル。クレタ一泊目ですが、きれいなリゾートでした

シーフードをたっぷりと味わいました。

朝食はフルーツとヨーグルトもチーズもたっぷり!

チーズのことは、次回にたっぷりお伝えしますね。

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