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本間るみ子の美味しいモノがたり

プーリアのチーズと食の旅 Vol.3

パンの街として有名なアルタムーラの歴史は古代に遡ります。
最終日は街の中にあるチーズ工房とパン屋さんを訪ねました。

■ステラ・ディ・チェッカStella Diecca(2024.10.12)

4代目のアンジェラントニオ・タフノが迎えてくれました。
彼の曽祖父が近隣の農家からかき集めてきた牛乳を加工して、曽祖母のステラがパスタフィラータのチーズをつくったのが、1900年初頭でした。そして彼らの息子は牛を飼い酪農場を開業。

チーズ造りは女性の仕事でしたが、4代目のアンジェラントニオは2010年に忘れ去られようとしていたチーズ「パローネ・ディ・グラヴィーナ(Pallone di Gravina)」の製造をスタートさせました。パローネは風船という意味ですが、ボール形や洋ナシ形もあります。
このチーズは2012年にはSlow Food 協会のPresidio((絶滅の危機に瀕した食品を保護するためのプロジェクト)に登録。現在生産者は4軒だと言います。
ホエースターターを使用し、凝灰岩の洞窟で熟成させることで特徴的な味わいになるといいます。

WORLD CHEESE AWARD 2020で金賞受賞。翌年2021年にも金賞を受賞して話題になり、遠くから農場を訪ねる人が増えているとアンジェラントニオは熱く語ってくれました。また、最近は山羊乳製のチーズの製造にも力を入れているそうです。

残念ながらバローネ・ディ・グラヴィーナの製造は見ることができませんでしたが、パスタフィラータのチーズの製造をたっぷり見学させていただきました。
2020年12月にDOPに登録されたモッツァレッラは牛が放牧されている季節だけしか製造しないことを知りました。

カードはいろんな形を楽しめるよと、ひょうきんなブルーノさんはここの職人さん カードはやや硬めです

お餅のようにちぎって広げ、中にちぎったカードとクリームを混ぜて入れて。ブッラータとは呼ばないけど、作り方は同じ

出来立てのチーズをすぐに販売する店舗のカフェ(Munbar)でランチとなりました。
ステラ・ディ・チェッカ自慢のチーズショップでおみやげチーズを購入して、パン屋さんに向かいました。

まるでレストランのようなサーヴィス!

ランチはチーズとワイン

自慢のチーズショップ!

■Panificio Di Gesù

パンのカテゴリーで最初にDOPの認定を受けたアルタムーラのパン。
スローフード協会のPresidioにも登録されています。
この日訪問したのはルカおじさんが1934年創業したというパン屋さんでした。
遺伝子操作されていない古代硬質デュラム小麦(セナトーレ・カッペリSenatore Cappell)、野生酵母と水だけでつくられます。

ポワラーヌのような大きなパンと司祭の帽子型のパン、大きいけど3つも買ってしまいました。

案内してくれた職人さん。
仕事着でなかったのは残念

窯は奥深いからか、オークの薪が長いこと!

■オストゥーニ

最終日は城壁の街、オストゥーニの迷宮散策からスタートしました。

オストゥーニから海辺の街、ファザーノでチーズショップや魚市場を見た後は、海辺のすばらしいレストランで魚介をたっぷり楽しみました。

バーリ空港は搭乗ゲート近くにあるモッツァレッラの壁に立ち止まってしまいました。中はチーズショップ! 搭乗直前にチーズを買う人が多いことがわかります。

バーリ空港の名所!
モッツァレッラの壁

陶器のモッツァレラは高級感が漂います

見て、食べて、驚いて、楽しんで。モッツァレッラ三昧の旅でした。(おわり)

プーリアのチーズと食の旅 Vol.2

■カゼイフィーチョ・コラティーノ Caseificio Coratino 訪問(2024.10.10)

ホテルを8時半に出発して15分でチーズ工房に到着。 DOPを持つカネストラート・プリエーゼの見学が目的でしたが、生産時期は羊の群れがアブルッツォオ州からプーリア州に移動してくる12月から5月までのため、私たちが訪問した時期は山羊乳を混ぜてつくっていました。したがってDOPは名乗ることはできません。

凝固したカードのカット。攪拌、型詰めはすべて手作業で行われていました。

熟成室に並んだチーズ

見学後に試食させていただいたチーズがおいしすぎて、
みんなお代わり。食べ過ぎてしまいました!

見学後のランチは、地元で人気だというカジュアルレストラン[Gli Uliva]。
たっぷりの試食でお腹が空かないといっていたはずなのに、どれもおいしく、おしゃべりも楽しく、完食でした。

案内くださったヴィッタンニオ・ロッソ氏。
私たちが熱心で、よく食べるので喜んでくれました。

午後は世界遺産の世界遺産のアルベロベッロ観光を楽しみました。

屋根の端っこに注目。イタリアでもハロウィンのかぼちゃが!

チーズショップは避けて通れない!

■フラニーテ農園 Masseria Fragnite(2024.10.11)

17世紀末から18世紀にかけて建立されたというフラニーテ農園。1832年に伯爵家が所有権を取得し、中庭を拡大して羊を飼う場所をつくり農場を再建しました。しかしそこには住居施設も教会もないため、農業集落としては機能せず、羊を飼育するだけになりました。
1860年、伯爵家の土地の管理人が変わると領土内の土地の売却が進み、農民を守るため住居と小さな教会が建設されました。その後、20世紀初頭の土地所有崩壊を乗り越えて、フラニーテ農園は多くの人が訪れる農園になったといいます。
さて、私たちが農場に到着すると牛さんたちが出迎えてくれました。

午前中の作業はほとんど終了していましたが、ブラータ製造をみせていただきました。
8代目だというピエトロさんの手さばきにうっとり!

熟成室も見学

試食にはチーズと農場で製造しているサラミも

私たちが熱心に質問したからか、ご機嫌のピエトロさんはなんと陶器の中に入れて熟成したというカチョカヴァロを割ってくださいました。ピエトロさんも初めて食べるというスペシャルなチーズでした。農園で製造しているというビールも振舞ってくださり、学び多い楽しい時間でした。

割っているシーンは、下の動画でどうぞ。

陶器で熟成させたカチョカヴァロ

■マッサリア・ブランカーティ・オリーヴ農園 Massaria Brancati

古代から何世紀にもわたって続く30haの農園には1000本以上の巨木があり、そのうち約800本(オリアローラ・サレンティーナ種)が天然記念物として登録されているというのですから驚きます。また、力強く濃厚なオイルの風味で知られるコラティーナ種の若木も800本植えられているそうです。

天然記念物のオリーヴの木

抱き合っているよう

古代からある農園はまるで博物館。広い農園を歩くことができたことに感謝です。

DOPを持つプーリアのオリーヴオイルは5種類。一番人気のE.V.オリーヴオイルは完売でしたが、4種類を試飲することができ、帰りにはおみやげも買いました!

(つづく)

プーリアのチーズと食の旅 Vol.1

■ブッラータ・ディ・アンドリア Burrata di Andria(IGP)

中からとろ~り、デザートのようなブッラータに初めて出会ったのはローマでした。どうやってつくるのか見たいと産地のプーリアまで出かけたのは、1998年のことです。
ブッラータが生まれたのは比較的新しく、モッツァレッラをつくるカードが余って処理に困ったビアンキーニさんが、モッツァレッラを袋状にして中に生クリームを混ぜたカードを入れることを思いついたことがきっかけだといいます。出来上がったブッラータをアスフォデーロという緑の葉っぱに包んで販売したのが、プーリアを訪れる観光客に見いだされ、やがてイタリア国中を流通するほどに知名度を上げたのです。
南イタリアは、チーズを販売するお店が通りに面してあり、奥に製造所があるので、店先には出来立てが並べられていました。かつて日本のお豆腐屋さんもそうでしたね。
このときは着いたホテルで、「この近くでおススメのカゼイフィーチョを教えて欲しい」と聞くと、電話帳をコピーして4軒のカゼイフィーチョに印をつけてくれたことを思い出します。

1999年発行の「チーズで巡るイタリアの旅」でも紹介しました

あれから四半世紀。2024年10月、世界遺産のカステル・デル・モンテにある工房CASEIFICIO OLANDAに到着すると、ブッラータ・ディ・アンドリア協会のフランチェスコ・メンネーア会長をはじめ4人が待っていてくれました。

ブッラータ・ディ・アンドリア協会のフランチェスコ・メンネーア会長とスタッフたち

中庭に案内されるや、すぐにブッラータの製造が始まりました。チーズ職人のおじさんはカードを持ち上げて、楽しそうに丸めていきます。そして糸状に裂いた生地と生クリームを入れて袋を閉じて出来上がり。出来立ては熱々なので、試食用はちゃんと冷やしてあるものを出してくださいました。

カードはよく伸びて、気持ちよさそう

カードをちぎって丸めて、袋状にしたら、糸状に裂いた生地とクリームを詰めて袋を閉じます。とっても楽しそう

中庭ではブッラータ製造のデモの準備が整えられていました

たっぷり試食をした後は、協会のご招待でブッラータ尽くしのサプライズランチを楽しみました。

巨大なブッラータにナイフを入れて。心ときめきます

試食のブッラータ。テーブルにドーンと

この後も、ブッラータづくしのランチ

ブッラータ・ディ・アンドリアは、2017年に PGI(地理的表示保護)登録。
現在登録されているのは16軒だそうです。

■ワイナリー・ジャンカルロ・チェチ Giacarlo Ceci

午後はムジェ高原の斜面にあるすばらしい景観のワイナリー「ジャンカルロ・チェチ」を訪問しました。

すばらしい景観のジャンカルロ・チェチ。心地よい風が吹き抜けます。

すぐ近くにはブッラータの見学前に案内してもらったユネスコの世界遺産の登録されている八角形のお城があります。13世紀、神聖ローマ皇帝フリードリヒ2世によって建設されたお城です。

チェチ家の畑は1819年に土地を手に入れてから200年以上の歴史があり、8代目のジャンカルロはボローニャ大学で農業を学び、農場を引き継いだあと、オーガニックに転換したそうです。
2011年には世界でもっとも厳しいと言われるオーガニック認証のひとつ「Demeter デメテール」認証を取得しました。2010年からはクリーンエネルギーである太陽光発電を導入。
サステナブルで自然と共生、自然を尊重した農業をされています。
農場は250ha(葡萄畑70ha、オリーヴ畑100ha、トマト畑30ha、オークの森30haなど)オークの森はぽポドリカ牛が放牧されているいるそうです。牛は乳を搾るためではなく、堆肥をつくるために放牧しているのだといいます。ビオディナミ農法に牛糞は欠かせないのですね。

農園の案内は2匹のワンちゃんです

チェチ氏にはお会いできませんでしたが、農園を案内していただいた後、ゆったりとワインテースティング。DOCのカステル・デル・モンテ2022、2021、2016、DOCGのカステル・デル・モンテのロゼ2022。ワイワイと楽しいテースティングになりました。

4種類のワインをテースティング

港町トラーニ。時間がなくて残念でしたが、翌朝も早起きして散策を楽しみました

陽が落ちる前に港町トラーニのホテルにチェックイン。
海の幸をたっぷりといただきました。(つづく)

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