チーズで巡るロンバルディアの旅Vol.4
2024年06月04日投稿
■シルテルってシッテル?
4日目(2023年9月15日)は、2015年9月15日にDOPに登録された山のチーズ「Silter」のアルペッジョ(夏季放牧)の見学です。イタリアDOPチーズをまとめて「イタリアチーズの故郷を訪ねて」を2015年2月に出版したときにはなかったのに!イタリアは知らないチーズが多いことを実感します。
Silter(シルテルまたはシルター)の指定生産地区はロンバルディア州ブレーシア県の山岳地帯にある自治体、ヴァッレ・カモニカとセビーノ・ブレシャーノです。Silter という名前はイタリア語で「Casera(カゼーラ)」を意味するケルト語が起源だと言われており、最も古い歴史的記録は17世紀後半に遡ります。乳を保存する方法としてつくられたチーズは地元住民にとって重要な栄養源。伝統に根ざし、代々受け継がれてきました。そして今日でも地元経済の重要な役割を果たしているというのです。
外観は前日訪ねたノストラーノと似ていて10~16kgの円盤型。生産者は34軒もありますが、スローフード協会のプレシディオ(Presidio)に登録されているのは3軒だけ。プレシディオは消滅の危機に瀕した食品を生産者の組織づくりや販路拡大の面からサポートするプロジェクトで、イタリア語で「砦」という意味があります。
私たちの訪問を快諾くださったジェシカさんは四駆で何度も往復して私たちをむかえてくださいました。牛たちの放牧風景と澄んだ空気が景色の気持ちいいこと。
小型バスはここまで
ジェシカさんは四駆で何度も迎えにきてくれました
雨が上がって太陽が顔をだしてくれました
アルペッジョの牛たちも気持ちよさそう
チーズ製造は早朝から始まっているはずですが、私たちの到着に合わせたかのように、銅鍋の乳がちょうど凝固してカードのカットが始まるところでした。ひげを生やしたおじいさんがカードを丁寧に均一にカットして攪拌したあと再び火にかけてゆっくり温度を上げて静置。
チーズを製造する貫禄あるおじさんは
二代目のステファノさん
ジェシカさんのお父さんです
カードを丁寧に攪拌して静置。頃合いをみて型入れが始まります
手前にある小さいチーズは山羊乳製の「ファトリ」
待っている間に外で深呼吸!搾乳した乳をバットに静置してある部屋は水が流れて厳かな雰囲気!
鍋の底にカードが沈んだ頃合いをみて、布でカードを集めて型入れです。銅鍋ひとつからたったふたつ。型に入れた後の重しは、なんと前日製造したシルテル!なんと合理的なのでしょう。製造が終わったころを見計らって、バター製造と続きます。バターの色の濃さと滑らかさは格別です。

搾乳した乳はバットにいれて。浮いたクリームでバターをつくります
バターチャーンはコンパクト
できたてのバターは濃い黄色。さらっとしておいしい
塩水づけされているシルテルとファトリ
ちょうど小腹が空いたころにジェシカさんが用意してくださったのは「シルテル」と山羊乳製の燻製チーズ「Fatuliファトリ」。シルテルの手前にあった小さなチーズの色は白く、塩水に一緒に入っていた小さなチーズも白かったことが、ちょっと気になっていましたが、聞きそびれていました。
「ファトリ」はジュニパーベリーで燻製にすることやカモシカ系の山羊、ビヨンダ山羊(Bionda dell’Adamello)でつくられることなど、新しい発見がありました。1995年には100頭まで減ったビヨンダ山羊も現在は4,500頭に増えているのだとか。 しっかりと燻製されていますが、品がよく濃厚でおいしいこと!
目的のシルテルはもちろん、ファトリもしっかりと購入して、時間さえ許されるなら、ここでゆっくりと過ごしたかったのですが、次の目的地へと向かいました。


ジュニパーベリーでじっくり時間をかけて燻製させた山羊乳製のファトリ
シルテルとファトリの試食を用意してくれたジェシカさん
ジェシカさんの妹も一緒に働いています
ステファノさんは二人の娘が協力してくれていてうれしそう
旅仲間たちと
ビヨンダ山羊たちは山の中
ケガをした一頭だけ残されていてラッキーでした
疲れ果てたのかな。ぐっすり
