チーズの旅
広島のチーズ生産者を訪ねて
2024年04月04日投稿
2023年4月7 & 8日
広島は三良坂フロマージュの松原さんに誘っていただいた牧場ピクニック。2023年のことですが、この前日には広島に入り、生産者を巡る旅を楽しんできました。まずはその生産者の方々をご紹介します。
■上ノ原牧場カドーレ
前回訪問したのは2018年4月。晴天の日曜日で子供連れの家族で賑わっていました。 酪農一筋の藤岡さんが丁寧に案内してくだったことを思い出します。
今回私たちを迎えてくださったのは、営業を担当される新井さんです。現在飼育しているのは32頭(うち搾乳牛22頭)。頭数が減っているのは円安による餌の高騰が原因だと言います。牛舎はフリーバーンになっていて、牛たちはストレスレス。優しそうな顔をしています。牧場はロバや山羊、ウサギもいて、餌やりをして触れ合うことができるよう観光牧場として発展途中だといいます。
チーズを製造されている小澤優作さんはまだ1年半のキャリアですが、一人で黙々と仕事をされている姿は頼もしくみえました。賞味期限が短いモッツァレッラは金曜日に製造されているそうで、タイミングよく見学できたことはラッキーでした。
1年半のキャリアだという小澤さん
昭和48年に建てられた牛舎。牛たちは寄り添って仲良さそう
子牛もいました
■やぎ丸牧場
標高500メートルにある世羅町で暮らす重丸政紀さんと奈弥香さんは限られた土地で豊かに暮らす方法として持続可能な循環型農業を行いたいと、米作り、養鶏、酪農を組み合わせて生計をたてていらっしゃいます。米作りで出る米ぬかやくず米は鶏の餌になり、鶏糞や山羊糞は有機肥料として田畑に還元しています。
まずは今年生まれたばかりの子山羊たちに挨拶です。子山羊たちはおばさんパワーに警戒心が隠せませんが、私たちにかまってもらいたいと飛び上がって大はしゃぎする1歳半のワンちゃん「めいけんチーズ」がかわいいこと!
すっかりと体が冷え切ったところで、いよいよ試食タイムです。「セラ・シェーヴル」「フロマージュブラン」「カンムリ」はどれも優しくておいしい!
名古屋コーチンの貴重な卵でつくる人気の奈弥香さんの定番スペシャルケーキとプリンは固定客がいるので販売分はわずかしかありません。前回はお子さま一人でしたが、二人目が生まれますます忙しい日々を過ごされていますが、もともとバーテンダーだった奈弥香さんは、今も「バル伊右衛門」で仕事をされています。福山まで行くだけでも時間がかかりますが、気分転換になり、チーズ好きの人を増やすことができるからと嬉しそうに話してくださいました。
山羊さんたちが迎えてくれました
生まれたばかりの子山羊たち。警戒心が隠せません
羊も飼い始めました
重丸さんご夫妻
■ふくふく牧場
創業した福島県の「ふく」と牧場主の福元さんの「ふく」から名付けられた「ふくふく牧場」。甘日市出身の福元紀生さんは東京出身の奈津さんと大学時代に出会い、牧場経営の夢を語りあいました。紀生さんは大学卒業後、八王子の磯沼牧場で4年働いたあと、磯沼さんに譲ってもらったジャージー牛を連れて福島県いわき市に移住。土地を少しずつ開墾して2010年からチーズ製造をスタート。これからという時に東日本大震災。放牧地は原発事故で汚染され、福島を離れることを余儀なくされてしまいました。
厳しい状況の中、かつて和牛の里として知られていた口和町の人たちが手を差し伸べてくれたことが移住の決め手になったといいます。使っていない牛舎を譲ってもらうことができたことも幸運だったといいます。
5年前に訪問した時はバターづくりを体験。今回は放牧地に案内していただきました。
広い放牧地は3月に生まれた子牛をいれて5頭。やっと草が生え始めたところですが、桜が咲き、ゆったりと草を食むジャージー牛たちの気持ちよさそうなこと!
搾乳牛は2頭だけ、搾乳量は年間3000リットル。好奇心いっぱいに歩き回るジャージーのミルクは甘くてコクがあり、貴重なミルクからつくられるチーズはファンが多いのは納得です。
自然の中で暮らす福元家は3人の女の子がいますが、牛もチーズづくりも大好きで積極的にお手伝いをしてくれると奈津さん。忙しい中、試食のチーズもたっぷり用意していただき、幸せなひと時を過ごすことができました。


ご自宅の前にチーズ工房とショップがあります
放牧地を案内していただきました
かつて使われていた牛舎を再利用


放牧が始まりました
山を開墾して牧草地はどんどんと広がっています。
福元さんご夫妻
■乳ぃーずの物語。
製造は月~木の4日間。週末の3日はイベントや販売に専念しています。ショップは土日祝日の11:00~17:00まで。
工房のパンフレットに記載されているのは、
「新鮮無農薬、減農薬の有機野菜・米。地道に。丁寧に。こだわるチーズ。産直ショップ。」
そしてオーバーオールの男の子と、野菜籠と、おじさんのイラストです。
母体の「株式会社敷信村農吉(しのうむらのうきち)」は、出生人口減少により利用者が減少していた保育所をなんとか運営できないかと、2006年に地元有志で立ち上げた会社だといいます。田園地帯の特徴を生かし「農」を取り入れた保育と農産物の販売も開始。
工房がある庄原の西、七塚原は日本初の国営種牛牧場ができた場所。明治時代、ヨーロッパから牛を輸入し、品種改良をして北海道に送ったそうです。
ショーケースに並んだチーズはどれも美しいこと! 壁にはCPA主催の「ジャパンチーズアワード」の賞状がずらりと飾られていました。
ショーケースに並んだチーズ


高台にある工房と販売所
■三良坂フロマージュの牧場ピクニック
さて、いよいよ今回の主目的、牧場ピクニックです。
ストレスレスの家畜(牛、山羊、羊)の良質な乳を原料に松原さんのセンスで生み出されるチーズは国内外のコンクールで高く評価され、瞬く間に日本を代表するチーズになりました。松原さんのサービス精神は半端なく、いつもは山で自由気ままに過ごす山羊や羊たちを、私たちのために目の前の放牧地に移動させておいてくれました。まるで、山羊や羊たちが私たちの到着を待ちわびていたのではないかと感動してしまいます。
まずは楽しみなテーブルに、太田京子さん率いる広島チーズチームがチーズプラトーを制作してくださいました。
さらにアイディアマンで行動力があり、チーズづくりはもちろん、料理も大好きな松原さんが焼いたグラスフェットバーガーのボリュームといったら! そのうえカチョカバロをとろ~り溶かして、これだけでお腹いっぱいになりそうなのに、窯で焼いた本格的なピッツァまで。もちろんプラトーも崩してチーズと近くで作られているヴィノーブルビンヤードのワインを楽しみながらおしゃべりも忙しい!
「牛バラ肉のワイントマト煮込み」も最高においしい。デザートは放牧ミルクのワッフル。そして熱々つきたてのお餅でつくった苺大福。そしてなんとそこに香川から参加の滑石朋子さんのスペシャルパンデピスとタルトタタン。峰俊恵子さんのコーヒーゼリー。福間シェフのカヌレとお腹いっぱいなのに、デザートは別腹です!
お腹が苦しくなったところで、牛たちに会いに放牧地へ!
すばらしい1日に感謝です。
山羊たちが迎えてくれました
広島チーズチームによるすばらしいチーズプラトー
あっという間にカチョカバロはこんな姿に!


積極的にお手伝いしてくれる松原家の2人のお嬢さん
羊の赤ちゃんを抱いて記念撮影!
松原さんは2004年にチーズ工房を立ち上げ、2006年から山野を開墾。
牛たちも気持ちよさそう。